一言でシェパードと言っても数犬種存在しますが、ここでは一般的なジャーマン・シェパードについてお話していきます。
結論から言いますと、シェパードは断耳しません。
大きな理由としては、JSV(日本シェパード犬登録協会)が定める”断耳””断尾”は欠点としてみなされる、というところにあります。
PD(日本警察犬協会)でも、傾斜耳・先を切って短くなった耳・垂れ耳は拒否されなければならない、とはっきり明示されています。
これは、日本の畜犬団体が、世界ドイツ・シェパード犬団体連盟の制定した規格を採用しているためです。
断耳をする犬種
シェパードは断耳しない犬種ではありますが、シェパード以外では耳を切る犬種もいます。
*シュナウザー(ミニチュア、スタンダード、ジャイアント)
*ピンシャー(ミニチュア、ドーベルマン)
*グレートデン
*ボクサー
*ボストンテリア
等、他にもありますが、一般に知られているのは上記の犬種かと思います。
昨今は動物愛護の観点から、上記の犬種でも断耳しない犬達も増えてきました。
JKC(ジャパン・ケンネルクラブ)等のドッグショーに出陳する犬達の中にも、断耳せずに出陳する犬達も増えて来ていますが、犬種のスタンダード(犬種標準)に断耳と記されている犬種は、現在も耳を切った容姿で出陳しています。
なぜ断耳が行われるのか
はるか昔、闘犬が盛んだった頃にさかのぼりますが、その当時は相手に咬みつかれにくいように、咬みつかれても軽症で済むようにとの考えから、耳を切ると言う考え方に至ったようです。
ヨーロッパでは耳の垂れた警察犬が外敵に襲われた時に、出来るだけ被害が少ないようにと断耳する行為に至った、と言う話もあります。
牧羊犬や狩猟犬も、牛や羊に接触する事でケガをするのを防いだり、木や草でケガをしないようにと言うのが、断耳する事のそもそもの理由でした。
断耳する犬種である牧羊犬や狩猟犬、警察犬ですが、その最も大きな理由は耳の損傷を最小限に防ぐためだったのですね。
現在の日本に於いては、闘犬というカテゴリーがなく(土佐犬除く)、牧羊犬や狩猟犬として働く犬も決して多くはありません。
JKCの犬種スタンダードにも、断耳が行われていることと記した犬種がいますが、これまでの慣習にのっとり耳を切る行為が行われている、と言えます。
ドッグショーに出陳する犬だけでなく、審美目的での断耳・断尾は禁止、としている国も多くなりましたが、警察犬や軍用犬には容認されている国が多いようです。
シェパードはなぜ耳を切らないのか
そもそもシェパードは、立ち耳犬種なので耳を切る必要性がない、と言うのが大きな理由でしょう。
断耳する犬種は全て元が垂れ耳の犬種ですが、耳を切って立ち耳にした方が外耳炎になりにくいとか、聴覚が発達するとか、諸説ありますが実際の所ははっきりしたデータは出ていません。
ここからは私の経験によりますが、垂れ耳の犬種の方が立ち耳の犬種よりも、外耳炎になりやすい犬は多いのではないでしょうか。
もちろん、どちらも日常しっかりメンテナンスしてあげている事が前提ですが、特に耳の中が蒸れやすい梅雨時から夏にかけては、垂れ耳の犬達には外耳炎対策が必須になります。
立ち耳のシェパードは、時々耳のケアをする程度で外耳炎になった事はありませんでしたが、ラブラドールは常に耳のケアが必要でした。
もちろん、その子の体質もありますが。
立ち耳の犬と垂れ耳の犬との、仕事に於ける違いもあります。
警察犬として直接犯人逮捕に向かうような襲撃訓練を受けていたり、監視や護衛を含む警戒活動を行うのは立ち耳犬種(シェパード、ドーベルマン等)が多く、麻薬探知犬や災害救助犬には垂れ耳犬種(ラブラドール、ゴールデン)が多く活躍しています。
立ち耳犬種は聴覚が、垂れ耳犬種は嗅覚がより発達している、とは良く言われますが、あながち間違ってはいないかもしれません。
実際のところは犬に聞いてみないとわかりませんが。
シェパードは耳を切るの?【まとめ】
シェパードは断耳する必要のない犬種であり、断耳する犬種にはそれぞれの仕事に合わせて断耳する必要がありました。
その姿が少しずつ変化し、紆余屈折ながら現在も引き継がれて来た、と言うお話をさせていただきました。
同じ犬種でも、耳のキリっと立った精悍なマスク、垂れた耳の優し気な横顔。
どちらが好きかは、人によって好みは分かれるでしょう。
断耳してもしなくても、かけがえのない1頭である事に間違いありませんよね。