ベタが安定した人気を誇る理由のひとつに、コップや瓶でも飼育できるというイメージが広がっていることが挙げられます。
確かに、熱帯魚ショップではコップに入れられたベタが並んでいることがあります。
しかし「こんな狭いところで飼育されてベタがかわいそう」と思う方がいるのも当然です。
今回は、一般家庭でもショップと同様にベタをコップで飼育することはかわいそうなのか、問題はないのか、解説していきます。
Contents
ベタがコップで飼えると言われる理由
そもそも、どうして「ベタがコップで飼える」というイメージが広がったのでしょうか。
最大の理由は、ベタの特殊な呼吸器官にあります。
ベタやグラミィなどの「アナバス」というグループの魚には、ラビリンス器官という呼吸器官があります。
この呼吸器官を使って、空中の空気を直接取り込み、呼吸することができるのです。
このため、ベタは酸欠に強く、コップのような狭い容器でも飼育できる、というイメージにつながりました。
また、ベタはもともと丈夫で、水質の悪化に強い魚です。
このことも、コップのようなごく低容量の容器で飼育できるとされる理由になっています。
コップで飼うベタはかわいそう?
ベタをコップで飼うのはおすすめできない
では、ベタはイメージ通りコップで飼うことができるのでしょうか。
結論から言えば、私はやめた方がいいと思います。
私はやったことはありませんが、おそらくカルキ抜きをした水をコップに入れ、ベタを入れてもしばらくは生きていると思います。
そして、ベタが元来もつ丈夫さと酸欠への強さから、数か月は生きていると思います。
飼育していると呼べるかどうか
これを、「飼育している」と呼ぶかどうか、という問題です。
逆に、「これではベタがかわいそう」と思うかどうかです。
決してベタにとってベストな環境で飼育しているわけではなく、むしろベタの体力頼みで、やがて確実にダメになるのをわかっていながらこういった飼い方をするのは、いいことだとは思いません。
また、この飼い方ではベタが常に強い環境ストレスにさらされていることになり、せっかく美しい個体を飼育していてもベストな状態を発揮できず、本来の美しさを楽しめません。
熱帯魚飼育は個人の趣味なので他人にとやかく言われるべきではないのですが、「どうしてもベタをコップで生かす」ことにこだわっているのでもなければ、やめた方がいいでしょう。
特に、「ショーベタ」と呼ばれるベタは観賞用にブリーダーが手塩にかけて育てた個体たちで、過酷な環境での飼育に慣れていません。
天寿を全うできないのはもちろん、驚くほど短命に終わる可能性があります。
ベタを「なんとか」コップで飼う方法
それでも、熱帯魚ショップでコップに入れられたベタは割といい状態を保っているように見えます。実は、これには仕掛けがあります。
コップで飼育することでベタにかかるストレスとしては、
・水質悪化
・温度変化
・水質変化
があります。
単純に泳げる空間が狭いことに対するストレス、刻々と悪化する水質に対するストレス、低容量ゆえに安定しない水温に対するストレス、そして水替えのたびに新しい水が注がれ、順応しなければいけないストレスです。
このうち、狭さはどうしようもありませんが、残りはアイデアとテクニックである程度カバーできます。
必要となる条件は、水質の安定した状態の良い水槽が別にあることです。
ベタは水質悪化にもストレスを受けますが、カルキ抜きしただけの水道水に順応させられることに対しても大きなストレスを受けます。
そこで、状態のいい水槽の水を使って水替えするのです。
できれば朝と夕方の2回、しかも2回目は餌を食べてフンを出したあとがいいでしょう。
そうすることで、水質が悪化する前に水を替えることができ、しかも新品の水ではなくいわゆる「こなれた水」で水替えすることができます。
また、コップに熱帯魚用のヒーターを設置するのは不可能ですが、爬虫類用のパネルヒーターを使用することである程度暖めることができます。
パネルヒーターの上にコップを置き、エアコンで室温を管理すれば、なんとかヒーターなしでも生きていけるでしょう。夏場はエアコンで冷やすことになります。
熱帯魚ショップはもともとエアコンで室温を管理していることが多く、水のこなれた水槽がいくらでもあるため、コップ飼育でも状態のいいベタを置くことができるのです。
ただし、これでずっと飼えるわけではなく、ショップでもベタが売れていなくなることを前提にしています。
まとめ
ベタのコップ飼育は確かに憧れますが、ベタのことを考えればやめておいた方が賢明です。
状態のいい水を用意したうえで、友人を家に招いたときなど一時的にコップに入れて楽しむのが限界だと思った方がいいでしょう。