熱帯魚の世界では、「ベタは酸欠に強く丈夫で飼いやすい」というのが定説のようにいわれています。
確かにその通りなのですが、ベタが酸欠に強い理由は、特殊な空気呼吸ができるからです。
今回は、ベタは肺呼吸なのかそれともエラ呼吸なのか?
またベタが酸欠に強いと言われる理由を解説していきたいと思います。
結論を言ってしまうとベタはエラ呼吸ではないのですが詳しくは本文をじっくり最後まで読んでくださいね。
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そもそも魚はどのように呼吸するの?
そもそも、魚という生き物は我々人間とは違った方法で、水中で呼吸しています。
体の側面にエラという器官があり、口から吸いこんだ水をエラから噴き出しています。
この時、エラにある細かなヒダのような部分で水中の空気を取り込み、呼吸しているのです。これを、エラ呼吸といいます。
魚は常にエラ呼吸しているため、水中で絶えず口をパクパクさせています。エラは胸ひれの近くにあるので、よく見ればエラが動いているのもわかるはずです。
ごく一部の例外を除き、ほとんどの魚はエラ呼吸と、体の表面から空気を取り込む皮膚呼吸を行っています。
例外的にエラ呼吸でない魚もいる
では、例外的にエラ呼吸以外の呼吸を行う魚にはどんなものがいるのでしょうか。
例外中の例外で、なおかつ知名度も高いのはハイギョです。
ハイギョは肺魚と書いてハイギョと読みます。
つまり、人間とほとんど同じ肺をもつ魚です。
このため、ハイギョは酸欠に極めて強い反面、定期的に水面に口を出して空気を吸わなければいけないため、水を満たして密閉した容器に入れると魚なのに溺れてしまいます。
他に、ドジョウの仲間とコリドラスが腸での空気呼吸を行います。
コリドラスがときどき水面にまっすぐ浮上し、お尻から泡を出して水底に戻っていくのは、この腸呼吸を行ったためです。
もうひとつ、空気呼吸を行う代表的なグループがあります。それが、ベタを含めたアナバスというグループです。
ベタは肺呼吸?
ベタがもつラビリンス器官
アナバスの仲間は、エラの上部にラビリンス器官という特殊な呼吸器官をもっています。
ラビリンスとは「迷路」「迷宮」という意味で、この器官が非常に複雑な構造をしていることからそう呼ばれています。
エラの補助的な機能をもつとされていますが、この器官により、空中から直接空気を取り込んで呼吸ができるのです。
これが、ベタが酸欠に強い理由です。
ベタは肺呼吸ではない
よく、「ベタは肺呼吸ができるので酸欠に強い」と言われることがありますが、実際にはベタには肺はありません。
エラ呼吸+ラビリンス器官の機能
また、主な呼吸はあくまでもエラ呼吸で、エラ呼吸を補助する機能としてラビリンス器官が機能しています。
ベタは酸欠に強いが水質悪化には強くない!
確かに、ベタにはラビリンス器官があるため、普通の魚よりも酸欠には強いといえます。
ただし、ベタは酸欠に強いだけで、水質悪化に強いわけではありません。
ふつう、水槽内が酸欠になる環境では水質悪化も起きやすく、あまり状態のいい飼育水ではない場合がほとんどです。
そんな環境では、美しいひれが細菌に冒されてボロボロになってしまうこともあります。
ベタは強い水流を好まないためフィルターやエアポンプは不向き、という記述を見ることもありますが、フィルターやエアポンプの水流を避けられないほど小さな水槽で飼うこと自体が、あまりいいことではありません。
ベタを健康に長く楽しむのなら、小型でも設備のきちんと整った水槽で飼うべきでしょう。
ちなみに、熱帯魚ショップではよくコップに入れられたベタが陳列されています。
これはショップ独自の特殊な技術が使われているわけではなく、水質の安定した大型水槽の水を頻繁に入れ替えているのです。
このため、コップのような小さな容器でもさほど水質が悪化せず、ベタも状態を崩さずに済んでいるのです。
同じやり方をすれば自宅でもコップでベタを鑑賞することはできますが、手がかかるのでおススメはしません。
まとめ
ベタにはラビリンス器官という独自の呼吸器官があるため、ほかの魚よりも酸欠に強いという性質をもっています。
しかし、ベタの美しさを最大限に引き出して楽しむためには、ラビリンス器官に頼らなくてもいいくらいの環境で飼育してやるのがベストです。